宅地建物取引士について
目次
宅地建物取引士とは
宅地建物取引士になるためには、(1)宅地建物取引士資格試験に合格する、(2)都道府県知事に登録する、(3)宅地建物取引士証の交付を受ける、という3つのプロセスを経る必要があります。
(1)宅地建物取引士資格試験
都道府県知事は、宅地建物取引業に関して必要な知識について、試験を行います。
登録講習機関が行う登録講習を修了した者については、登録講習修了試験に合格した日から3年以内に行われる試験について、試験の一部(5問)が免除されます。
都道府県知事は、不正の手段によって試験を受け、または受けようとした者に対しては、合格の決定を取り消し、またはその試験を受けることを禁止することができます。さらに、3年以内の期間を定めて試験を受けることができないものとすることができます。
(2)登録
試験に合格した者で、宅地もしくは建物の取引に関し2年以上の実務の経験を有するものまたは国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めたものは、後記の欠格事由に該当しない限り、当該試験を行った都道府県知事の登録を受けることができます。
登録は義務ではなく、登録の期限もありません。試験合格から何年後であっても登録することができます。
2年以上の実務経験がない場合、国土交通大臣の登録を受けた講習(登録実務講習)を受講して終了することによって登録することができます。
※宅地建物取引士の登録に係る実務の経験について(解釈・運用)
実務経験として算入できる業務の内容は、免許を受けた宅地建物取引業者としての経験又は宅地建物取引業者の下で勤務していた経験をいい、顧客への説明、物件の調査等具体の取引に関するものと解される。受付、秘書、いわゆる総務、人事、経理、財務等の一般管理部門等の顧客と直接の接触がない部門に所属した期間及び単に補助的な事務に従事した期間については算入しないことが適当と解される。
(3)宅地建物取引士証の交付
宅地建物取引士として登録を受けている者は、登録をしている都道府県知事に対し、宅地建物取引士証の交付を申請することができます。
宅地建物取引士証の交付を受けようとする者は、登録をしている都道府県知事が国土交通省令の定めるところにより指定する講習で交付の申請前6月以内に行われるもの(法定講習)を受講しなければなりません。ただし、試験に合格した日から1年以内に宅地建物取引士証の交付を受けようとする者または登録の移転により宅地建物取引士証の交付を受けようとする者については、法定講習を受講する必要はありません。
宅地建物取引士証の有効期間は5年です。宅地建物取引士証の有効期間は、申請により更新することができます。
※宅地建物取引士証の提示義務
宅地建物取引士は、重要事項説明をするときは、請求がなくても宅地建物取引士証を提示しなければなりません。また、取引の関係者から請求があったときは、必ず宅地建物取引士証を提示しなければなりません。
宅地建物取引士の職務内容
宅地建物取引士でなければ行うことができない職務は次の3つです。
(1)重要事項の説明
(2)重要事項説明書への記名押印
(3)契約成立後交付する書面(37条書面)への記名押印
宅地建物取引士の業務処理の原則等
(1)業務処理の原則
宅地地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地または建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護および円滑な宅地または建物の流通に資するよう、公正かつ誠実に宅地建物取引業法に定める事務を行うとともに、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならないとされています。
(2)信用失墜行為の禁止
宅地建物取引士は、宅地建物取引士の信用または品位を害するような行為をしてはならないとされています。
(3)知識および能力の維持向上
宅地建物取引士は、宅地または建物の取引に係る事務に必要な知識および能力の維持向上に努めなければならないとされています。
登録の基準(欠格事由)
(1)免許の基準と同じもの
下記の事由に該当する者は、宅地建物取引業免許を取得することができず、かつ宅地建物取引士の登録を受けることもできません。
- 破産者で復権を得ないもの
- 不正手段による免許取得、業務停止処分事由に該当し情状が特に重い、業務停止処分違反を理由に免許取消処分を受け、取消しの日から5年を経過しない者
- 免許を取り消された者が法人である場合において、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内にその法人の役員であった者で、当該取消しの日から5年を経過しないもの
- 免許の取消処分の聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日または当該処分をしないことを決定する日までの間に廃業の届出があった者(宅地建物取引業の廃止について相当の理由がある者を除く。)で当該届出の日から5年を経過しないもの
- 免許の取消処分の聴聞の期日および場所が公示された日から当該処分をする日または当該処分をしないことを決定する日までの間に合併による消滅、解散の届出または廃業の届出をした者(相当の理由がある者を除く。)が法人である場合、当該公示の日前60日以内に役員であった者で当該消滅または届出の日から5年を経過しない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 一定の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団員等
- 心身の故障により宅地建物取引士の事務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるもの
(2)免許の基準と異なるもの
- 下記のいずれかの事由に該当することにより登録の消除の処分を受け、その処分の日から5年を経過しない者
- 不正の手段により登録を受けたとき
- 不正の手段により宅地建物取引士証の交付を受けたとき
- 指示処分事由に該当し情状が特に重いときまたは事務禁止処分に違反したとき。
- 登録しているが取引士証の交付を受けていない者が、不正の手段により登録を受けたとき
- 登録しているが取引士証の交付を受けていない者が、宅地建物取引士としてすべき事務を行い、情状が特に重いとき
- 登録消除処分に係る聴聞の期日および場所が公示された後に登録を消除した者
- 事務禁止処分に係る聴聞の期日および場所が公示された後に登録を消除した者
- 営業許可を受けていない未成年者
宅地建物取引士資格登録簿の変更の登録
宅地建物取引士の登録を受けている者は、以下の事項に変更があったときは、遅滞なく、変更の登録をしなければならないとされています。
- 氏名
- 住所
- 本籍(日本の国籍を有しない者にあっては、その者の有する国籍)及び性別
- 宅地建物取引業者の業務に従事する者にあっては、当該宅地建物取引業者の商号又は名称及び免許証番号
※宅地建物取引士証の書換え交付申請
氏名、住所に変更が生じたときは、変更の登録とあわせて、宅地建物取引士証の書換え交付申請をする必要があります。
登録の移転
宅地建物取引士の登録を受けている者は、当該登録をしている都道府県知事の管轄する都道府県以外の都道府県に所在する宅地建物取引業者の事務所の業務に従事し、または従事しようとするときは、当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事に対し、当該登録をしている都道府県知事を経由して、登録の移転の申請をすることができます。ただし、事務禁止処分を受け、その禁止の期間が満了していないときは登録の移転をすることができません。
登録の移転をするかどうかは任意であり、登録の移転をせずに登録を受けている都道府県以外の都道府県に所在する宅地建物取引業者の業務に従事しても問題ありません。
また、単に住所を変更したに過ぎないときには、登録の移転の申請をすることはできません。
登録の移転があったときは、当該宅地建物取引士証は、その効力を失います。
登録の移転の申請とともに宅地建物取引士証の交付の申請があったときは、移転後の都道府県知事は、移転前の宅地建物取引士証の有効期間が経過するまでの期間を有効期間とする宅地建物取引士証を交付します。
死亡等の届出
宅地建物取引士の登録を受けている者が次のいずれかに該当することとなった場合においては、その旨をその登録を受けている都道府県知事に届け出なければなりません。
(1)死亡したとき
相続人が死亡の事実を知った日から30日以内に届け出る必要があります。
(2)心身の故障により宅地建物取引士の事務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるものとなったとき
本人またはその法定代理人もしくは同居の親族が30日以内に届け出る必要があります。
(3)上記以外の登録欠格事由に該当したとき
本人が30日以内に届け出る必要があります。
免許の場合と異なり、「破産者で復権を得ないもの」に該当した場合の届出義務者は「本人」とされていることに注意が必要です。
申請等に基づく登録の消除
都道府県知事は、(1)本人から登録の消除の申請があったとき、(2)上記の死亡等の届出があったとき、(3)届出がなくて上記の事由に該当する事実が判明したとき、(4)宅地建物取引士資格試験の合格の決定を取り消されたときは、登録を消除しなければならないとされています。
宅地建物取引士は、登録が消除されたときまたは宅地建物取引士証が効力を失ったときは、速やかに、宅地建物取引士証をその交付を受けた都道府県知事に返納しなければならないとされています。
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