重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律

2022年9月20日に「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」(以下「重要土地調査法」といいます。)が施行されました。

注視区域の指定

重要土地調査法では、重要施設の敷地の周囲おおむね1,000㎡の区域内及び国境離島等の区域内の区域で、その区域内にある土地等が当該重要施設の施設機能又は当該国境離島等の離島機能を阻害する行為の用に供されることを特に防止する必要があるものを、注視区域として指定することができるものとしています。

「重要施設」とは、以下のものを指します。
①防衛関係施設(自衛隊の施設並びに日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二条第一項の施設及び区域)
②海上保安庁の施設
③国民生活に関連を有する施設であって、その機能を阻害する行為が行われた場合に国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生ずるおそれがあると認められるもので政令で定めるもの(原子力発電所等及び空港)

土地等利用状況調査

内閣総理大臣は、注視区域内にある土地及び建物(以下「土地等」といいます。)の利用の状況についての調査(土地等利用状況調査)を行うものとしており、土地等利用状況調査のために必要がある場合においては、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長その他の執行機関に対して、当該土地等利用状況調査に係る注視区域内にある土地等の利用者その他の関係者に関する情報のうちその者の氏名又は名称、住所その他政令で定めるもの(本籍(国籍等)、生年月日、連絡先及び性別)の提供を求めることができるとされています。

また、内閣総理大臣は、関係行政機関の長等に対して上記の情報の提供を求めた結果、土地等利用状況調査のためなお必要があると認めるときは、注視区域内にある土地等の利用者その他の関係者に対し、当該土地等の利用に関し報告又は資料の提出を求めることができるとされています。

なお、上記の報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出したときは、当該違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処されます。

注視区域内にある土地等の利用者に対する勧告及び命令

内閣総理大臣は、注視区域内にある土地等の利用者が当該土地等を重要施設の施設機能又は国境離島等の離島機能を阻害する行為の用に供し、又は供する明らかなおそれがあると認めるときは、土地等利用状況審議会の意見を聴いて、当該土地等の利用者に対し、当該土地等を当該行為の用に供しないことその他必要な措置をとるべき旨を勧告することができます。

さらに、内閣総理大臣は、上記の勧告を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、当該者に対し、当該措置をとるべきことを命ずることができ、この命令に違反したときは、当該違反行為をした者は、2年以下の懲役若しくは200円以下の罰金に処し、又はこれを併科するものとされています。

損失の補償

内閣総理大臣は、上記の勧告又は同命令を受けた者が当該勧告等に係る措置をとったことによりその者が損失を受け、又は他人に損失を与えた場合においては、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償するものとしています。

土地等に関する権利の買入れ

内閣総理大臣は、注視区域内にある土地等について、その所有者から勧告等に係る措置によって当該土地等の利用に著しい支障を来すこととなることにより当該土地等に関する権利(土地の所有権又は建物の所有権(当該建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権を含みます。)をいう。)を買い入れるべき旨の申出があった場合においては、第三項の規定による買入れが行われる場合を除き、特別の事情がない限り、これを買い入れるものとしています。

特別注視区域の指定

内閣総理大臣は、注視区域に係る重要施設が特定重要施設(重要施設のうち、その施設機能が特に重要なもの又はその施設機能を阻害することが容易であるものであって、他の重要施設によるその施設機能の代替が困難であるものをいいます。)である場合又は注視区域に係る国境離島等が特定国境離島等(国境離島等のうち、その離島機能が特に重要なもの又はその離島機能を阻害することが容易であるものであって、他の国境離島等によるその離島機能の代替が困難であるものをいいます。)である場合には、当該注視区域を、「特別注視区域」として指定することができるとされています。

「特定重要施設」とは、防衛関係施設のうち、以下のものが対象となります。
①指揮中枢機能又は司令部機能を有する施設
②警戒監視・情報機能を有する施設
③防空機能を有する施設
④離島に所在する施設

特別注視区域における土地及び建物の所有権等の移転等の届出

特別注視区域内にある土地等に関する所有権又はその取得を目的とする権利(所有権等)の移転又は設定をする契約(予約を含みます。)を締結する場合には、当事者は、当該土地等売買等契約を締結した日から起算して2週間以内に、内閣総理大臣に届け出なければならないとされています。

<届出すべき事項>
①当事者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
②当該土地等売買等契約の対象となる土地等の所在及び面積
③当該土地等売買等契約の目的となる土地等に関する所有権等の種別及び内容
④当該土地等売買等契約による土地等に関する所有権等の移転又は設定後における当該土地等の利用目的
⑤前各号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項

<届出が不要な場合>
①土地面積(建物の場合は床面積)が200㎡未満である場合
②所有権等の移転又は設定を受ける者が国、地方公共団体その他政令で定める者である場合
③土地等の賃貸借契約
④相続による所有権の移転等


なお、施行日(2022年9月20日)時点においては、注視区域・特別注視区域の指定はまだ行われておりません。個々の重要施設・国境離島等について、法の要件や基本方針の内容に照らして評価し、土地等利用状況審議会の意見を聞いた上で決定することとされております。

重要事項説明

重要土地調査法の施行と同時に、宅地建物取引業法施行令も改正され、上記の特別注視区域における土地及び建物の所有権等の移転等の届出について重要事項説明において説明すべきとされました。

ページトップへ