民法改正による不動産取引への影響(1)時効期間と起算点の変更

今回の改正により、消滅時効制度が大きく変わります。

  • 時効期間と起算点
  • 商事消滅時効(商法第522条)の廃止(民法の消滅時効に一元化)
  • 定期給付債権の短期消滅時効(現行第169条)の廃止
  • 各種短期消滅時効(現行第170〜174条)の廃止

ここでは、上記のうち「時効期間と起算点」の改正について検討します。

【現行】

(消滅時効の進行等)
第166条  消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
2  前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

(債権等の消滅時効)
第167条  債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
2  債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。

【改正案】

(債権等の消滅時効)
第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 前2項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

現行法では、「権利を行使することができる時」を起算点とし、そこから10年間権利を行使しなかったときに消滅時効が成立するとしています。

これに対し、改正案では、原則として「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年」と「権利を行使することができる時から10年」のいずれか早い方で時効が成立するとしています。

現行法と比べると、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年」で時効が完成してしまう点が債権者にとって不利(債務者にとって有利)ということになります。

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