特定投資家への告知義務

金融商品取引法は、投資家を保護するための様々なルールを定めています。

しかし、一口に投資家といっても、何千億円もの資金を運用する年金基金のようなプロフェッショナルもいれば、数十万、数百万円単位で株式や投資信託を購入する個人もいます。

これらを十把一絡げにして規制をするのは適当ではないため、金融商品取引法では投資家を「特定投資家」と「一般投資家」に区分し、前者に対する金融商品取引業者の行為規制を緩和しています。

これによって、顧客が特定投資家である場合には、金融商品取引業者の事務負担は大幅に少なくなります。


ただし、気をつけなければならないことがあります。

特定投資家のうち「金融商品取引法第79条の21に規定する投資者保護基金その他の内閣府令で定める法人」については、顧客の申出によって一般投資家に移行することができることになっています。

内閣府令で定める法人とは、次に掲げるものです。

  • 特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人
  • 法第79条の21に規定する投資者保護基金
  • 預金保険機構
  • 農水産業協同組合貯金保険機構
  • 保険業法第259条 に規定する保険契約者保護機構
  • 特定目的会社
  • 金融商品取引所に上場されている株券の発行者である会社
  • 取引の状況その他の事情から合理的に判断して資本金の額が5億円以上であると見込まれる株式会社
  • 金融商品取引業者又は法第63条第3項に規定する特例業務届出者である法人
  • 外国法人

※従前は「地方公共団体」も特定投資家でしたが、平成23年4月1日より一般投資家という取扱いになります。

さらに、金融商品取引業者は、これらの特定投資家に対して「一般投資家へ移行できること」について告知しなければなりません。

そのうえで、当該特定投資家から一般投資家への移行の申出があった場合には、予め下記の事項を記載した書面を当該特定投資家に交付しなければなりません。

(1)承諾日
(2)対象契約の属する契約の種類
(3)承諾日以後に対象契約の締結の勧誘又は締結をする場合において、当該申出者を特定投資家以外の顧客として取り扱う旨
(4)その他内閣府令で定める事項

一般投資家への移行申出があった場合には、金融商品取引業者はその申出を承諾しなければなりません。


「顧客が特定投資家だから何もしなくてよい」と考えるのは早計であり、上記のとおりの告知義務、そして移行申出があった場合の書面交付義務・承諾義務があることを忘れないようにしてください。

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