信託受益権売買について(3)信託受益権の移転

現物不動産の売買においては、売買代金の支払いと引き換えに、対象不動産の「所有権」が売主から買主へ移転することになります。

これに対して信託受益権の売買は、売買代金の支払いと引き換えに、信託信託受益権という信託受託者(信託銀行)に対する「債権」が売主から買主に移転することになります。

つまり、信託受益権の売買というのは「債権譲渡」なのです。

債権譲渡があったことを第三者に主張する(対抗する)ためには、

・確定日付のある債務者への通知

または

・確定日付のある債務者の承諾

が必要となります(民法第467条、信託法第94条)。


信託受益権の場合、信託契約の中で信託受益権の譲渡には信託受託者の承諾が必要であると定められていることが殆どですので、実務上では売主・買主連名で「信託受益権譲渡承諾依頼書兼承諾書」を信託受託者に提出し、決済当日までに信託受託者の承諾印をもらうことが行われています。

なお、「確定日付」とは、その書面がその日付の時点で存在していたことの証拠となるもので、信託受益権の譲渡承諾の場合には、信託受託者が承諾印を捺した承諾書を公証人役場へ持っていき、日付の入ったハンコを捺してもらうのが一般的です。

ところで、信託受益権の移転(受益者の変更)があった場合には、信託目録の受益者を変更する登記が行われます。

しかし、上述のとおり信託受益権譲渡の対抗要件は「債務者への通知または債務者の承諾」ですので、たとえ受益者変更登記があったとしても、承諾書が無ければ対抗要件を具備しているとは言えないので注意が必要です。

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