2015年

ブログ更新: 民法改正による不動産取引への影響(8)危険負担

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民法改正による不動産取引への影響(8)危険負担

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危険負担とは、双務契約成立後に、債務者の責めに帰さない事由によって一方の債務の履行が不可能となった場合に、他方の債務が存続すのか、あるいは消滅するのか、ということです。
 
現行法においては、不動産等の特定物売買においては、売主の目的物引渡債務の履行が不可能となった場合でも、買主の代金支払債務は存続するという債権者主義が採用されています(第534条)。
 
この債権者主義に関しては批判も多く、実務においては、当事者間の合意によって債権者主義を排除する定め、すなわち目的物引渡債務の履行が不可能となった場合には代金支払債務も消滅するという取り決めをすることが一般的です。
 
 
今回の改正案においては、債権者主義の条項は削除されています。
 
つまり、当事者双方の責めに帰することができない事由によって目的物引渡債務を履行することができなくなったときは、買主は代金の支払を拒むことができることになります。
 
法律としては大きな転換ですが、現在の実務上の取扱い(契約書において債権者主義の排除の特約を定める)と同じ結果になるので、特段大きな問題は無いと思われます。
 
 
【現行】
(債権者の危険負担)
第534条  特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2  不特定物に関する契約については、第401条第2項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。
 
(停止条件付双務契約における危険負担)
第535条  前条の規定は、停止条件付双務契約の目的物が条件の成否が未定である間に滅失した場合には、適用しない。
2  停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰することができない事由によって損傷したときは、その損傷は、債権者の負担に帰する。
3  停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰すべき事由によって損傷した場合において、条件が成就したときは、債権者は、その選択に従い、契約の履行の請求又は解除権の行使をすることができる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
 
(債務者の危険負担等)
第536条  前2条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
2  債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
【改正案】
第534条、第535条は削除
 
(債務者の危険負担等)
第536条  当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2  債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
 

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ブログ更新: 民法改正による不動産取引への影響(7)債務不履行による契約の解除と損害賠償

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民法改正による不動産取引への影響(7)債務不履行による契約の解除と損害賠償

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現行法では、債務不履行が成立した場合、債権者は債務者に対して、損害賠償の請求(第415条)ができるとしていますが、債務不履行が成立するための要件として、履行遅滞や履行不能が債務者の責めに帰することができる事由(故意・過失)によって生じていることが必要とされています。
 
また、債務不履行が成立した場合、債権者は、契約の解除(第541条〜第543条)をすることもできますが、契約の解除においても債務者の帰責性が要求されています。
 
今回の改正案では、契約の解除については、債務者の帰責性を要件から外し、帰責性については損害賠償請求の要件としています。
 
上記のことはどちらかというと学問的な話ですので、実務への影響は少ないと思います。
 
しかし、履行遅滞による解除(催告による解除)については、不履行が軽微の場合には契約の解除が認められないことが明記されたことに注意が必要です(改正案第541条但書)。
 
「債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない」という文言が加わっていることに注意が必要です。
 
附随的義務の履行を怠ったにすぎないような場合には契約を解除することができないというのは、従前の判例(最高裁昭和36年11月21日判決)と変わりませんが、それが法律で明記されたことにより、たとえば債権者が契約の解除を主張した場合に、債務者側が軽微な不履行である(ので契約の解除は認められない)と主張しやすくなる可能性があります。
 
このため、契約書において契約解除事由を単に「本契約に違反した場合」とするのではなく、具体的にどのような場合に契約解除権が生じるかを明確にしたほうが、トラブル防止の観点から望ましいと思われます。
 
【現行】
(債務不履行による損害賠償)
第415条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
 
(履行遅滞等による解除権)
第541条  当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
 
(定期行為の履行遅滞による解除権)
第542条  契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、前条の催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる。
 
(履行不能による解除権)
第543条  履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
【改正案】
(債務不履行による損害賠償)
第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償を請求することができる。
 一 債務の履行が不能であるとき。
 二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
 三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
 
(催告による解除)
第541条  当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
  
(催告によらない解除)
第542条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
 一 債務の全部の履行が不能であるとき。
 二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
 三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
 四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
 五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
 一 債務の一部の履行が不能であるとき。
 二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
 
(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
第543条 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前2条の規定による契約の解除をすることができない。
 
 

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ブログ更新: 民法改正による不動産取引への影響(6)瑕疵担保責任

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民法改正による不動産取引への影響(6)瑕疵担保責任

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現行法では、売買の目的物に隠れた瑕疵があったとき、善意・無過失の買主は、売主に対して損害賠償を請求することができ、さらに瑕疵の存在によって契約をした目的を達することができない場合には契約を解除することができる、としています(民法第570条、第566条)。
 
「隠れた瑕疵」とは、買主が取引上一般に要求される注意をしても発見することができない瑕疵(キズ、不具合等)をいい、物理的な瑕疵のみならず、法律的な瑕疵も含むものとされています。
 
今回の改正では、隠れた瑕疵という言葉を「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合」に変更するとともに、買主が取り得る手段として(1)履行の追完の請求、(2)代金の減額の請求、(3)損害賠償の請求、(4)契約の解除、の4つを用意しています。
 
現行法が損害賠償と契約解除しかできなかったのに対して、履行の追完(目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡し)と代金減額も請求することができるという点が大きな違いです。
 
 
【現行】
(売主の瑕疵担保責任)
第570条  売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
 
(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
第566条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3  前2項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。
【改正案】
(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第566条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
 
 

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ブログ更新: 民法改正による不動産取引への影響(5)法定利率

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民法改正による不動産取引への影響(5)法定利率

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金銭の貸借、原状回復による金銭の返還、遅延損害金等、利息を付すべき場面において当事者間で利率を定めなかった場合に適用されるのが法定利率です。
 
現行法では、契約当事者のうち少なくとも一人が商人である場合は商事法定利率(年6%:商法第514条)が適用され、契約当事者の双方が商人ではない場合は民事法定利率(年5%:民法第404条)が適用されます。
 
今回の改正案では、(1)商事法定利率が廃止されて民法の法定利率に一本化され、(2)法定利率は年3%を基準に市場金利の変動を踏まえて3年ごとに1%刻みで見直す、としています。
 
【現行】
(法定利率)
第404条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。
【改正案】
(法定利率)
第404条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年3パーセントとする。
3 前項の規程にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令に定めるところにより、各期の初日に属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が1年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(その割合に0.1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。
 

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ブログ更新: 民法改正による不動産取引への影響(4)根保証

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民法改正による不動産取引への影響(4)根保証

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保証金額や保証期限に定めのない「包括根保証」は、保証人が過大な責任を負う可能性のあることや、経営者の新たな事業展開や再起を阻害するとの指摘があり、平成16年の民法改正により禁止されました。
 
平成16年改正では、主たる債務の範囲に融資に関する債務が含まれているもの(貸金等根保証契約)のみが禁止の対象となっていましたが、今回の改正では貸金等根保証契約だけでなく、個人根保証全般に対象を拡大することとしています。
 
この結果、建物賃貸借契約において、個人が賃料等の債務を連帯保証するケースにも影響が生じることになります(法人が保証人となる場合には影響はありません)。
 
具体的には、連帯保証契約において「極度額」(保証人が保証する金額の上限)を定めないと、連帯保証契約が無効となることに注意が必要です。
 
賃貸人側からすると、保証金額の上限を幾らで定めるかというのは非常に悩ましいところです。
 
かといって過大な極度額の定めは公序良俗違反(民法第90条)で無効とされる危険もありますので、敷金の金額、原状回復に要する費用、明渡し完了までに要する時間等を勘案しつつ、賃貸人の損害をカバーできる水準で極度額を定めることになります。
 
 
【現行】
(貸金等根保証契約の保証人の責任等)
第465条の2  一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2  貸金等根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
3  第446条第2項及び第3項の規定は、貸金等根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。
 
 
【改正案】
 (個人根保証契約の保証人の責任等)
第465条の2 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
3 第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。
 

 

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