2010年
コンプライアンス態勢はルール作りから
コンプライアンスというのは、単に法令を遵守することだけにとどまらず、社会から期待されている倫理的な責任(社会規範の遵守)を果たすことも含むとされています。
つまり、法令さえ守れば何をやってもよいということではなく、企業倫理の観点から一定の限界(やってはいけないこと)が存在するということです。
そこで、経営陣・従業員が守るべきルール(規程、マニュアル等)を定め、これを遵守する態勢を作ることが求められています。
ルールが抽象的なものであると、具体的な場面でどのように行動すべきかについての判断が人によってバラバラとなってしまいますので、誰が読んでも同じ判断ができるようにできる限り明確に定めることが大切です。
他社の規程や市販されている雛型をそのまま流用し、単にライセンス申請のための形式を整えるといったことも見受けられますが、当然このようなことは望ましくありません。
なぜなら、自社の商品・サービス、顧客、人員体制等と適合しないルールをそのまま流用しても、そのルールがきちんと守られることは期待できないからです。
ルールが絵に描いた餅であっては意味がありません。
ルールを作る以上は、必ず守ってもらわなければなりません。
そのためにも、法務担当者や外部のコンサルタントだけではなく、営業部門や管理部門等も一緒にルール作りを進めることが望ましいと思います。
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標題の1:29:300とは、ハインリッヒの法則(Heinrich's law)を表しています。
ハインリッヒの法則とは、
1件の重大事故・災害の影には、29件の軽微な事故・災害が潜んでいて、29件の軽微な事故・災害の影には、300件の「事故には至らなかったもののヒヤリとした、ハッとした事例」がある
というものです。
重大な事故が起きてしまうと、時にはその企業の存続に深刻な影響を与えてしまいます。
そのため、重大事故を未然に防ぐというのは経営にとって非常に重要な事柄であります。
このハインリッヒの法則に従えば、重大事故を防止するためには、事故や災害の発生が予測されたヒヤリ・ハットの段階で対処していくことが必要ということになります。
コンプライアンス(法令遵守)の考え方もこれに通じるものがあります。
法令違反等の行為によって顧客に損失を与えたり、監督官庁から処分を受けたり、あるいは刑事罰を科せられることは、企業の存続に関わる重大な事故といえます。
しかし、そのような(重大な)法令違反行為が単発で行われているということはなく、トラブルになっていない(軽微な)法令違反行為がに行われていて、さらには違法とまでは言えなくても不適切な行為が日常的に行われている可能性があると考えられます。
逆にいえば、経営トップから末端の従業員(正社員のみならず、派遣社員、契約社員、アルバイト等も含む)に至るまで、コンプライアンス意識を浸透させることによって、結果的には重大な事故を未然に防ぐことにつながると考えられます。
それは単に「法令を守りましょう」とお題目を唱えるだけではなく、人間は必ずミスをする、あるいは時には悪事を働いてしまうこともある(これは決して性悪説ということではなく、完全・完璧な人はいないという当たり前の前提です。)という考えに立って、そのようなことが起きないような「仕組み」を作っていくということだと思います。
金融商品取引法の施行によって、不動産プレーヤーにとってもコンプライアンスを無視することはできなくなりました。
今まで良い意味で「勘と度胸」でやってきた世界ですから、やたら書類が増えたり、手続きに時間がかかったりすることに戸惑いを覚えていらっしゃる方も多いかと思います。
しかし、1回でも重大事故を起こしてしまうと二度とプレーができなくなってしまう可能性もあるわけですから、コンプライアンスについても前向きに捉えて頂き、業務の進め方等について今一度見直しをされてはいかがでしょうか。
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ブログ更新: 「社内記録」の重要性
代表ブログに【 「社内記録」の重要性 】の記事をアップいたしました。
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第二種金融商品取引業者様: 「社内記録」の重要性
コンプライアンス態勢の構築を考えるうえで重要なキーワードとなるのが「社内記録」です。
法律に定められた義務を履行しているか、社内規程に定められたフローどおりに業務を行っているか、というようなことを第三者(主に当局)に対して明らかにするためには、単に契約書や契約締結前交付書面(重要事項説明書)等を保管しているだけでは足りません。
そのため、自らの業務の行跡(ぎょうせき)を外部の第三者にも理解できるような形で記録しておくこと…社内記録の整備…が重要となります。
不動産信託受益権の売買の媒介を行う第二種金融商品取引業者の場合、「顧客への対応が適切に行われているか」ということを後から検証できるような記録を残しておく必要があると考えます。
具体的にどのような内容・形で記録に残すべきかについては、それぞれの業者の組織体制や取扱商品・顧客属性等によって異なってきますが、以下に例を挙げてみます。
(1)顧客の氏名(商号)及び住所(所在)
犯罪収益移転防止法に基づく本人確認を行うこととも当然必要ですが、下記(2)(3)を確認する前提として把握する必要があります。
(2)特定投資家か一般投資家か
金融商品取引法では、投資家をプロ(特定投資家)とアマ(一般投資家)に区分して、前者に対する金融商品取引業者の行為規制を緩和しています。
このため、顧客が特定投資家・一般投資家のいずれに該当するかを確認する必要があります。
また、特定投資家のうち一定の者については一般投資家へ移行する旨を申し出ることが可能とされており、金融商品取引業者はこのような特定投資家に対して移行申出が可能である旨を告知する義務を負っています。
そのうえで、移行申出がなされた場合には、一定の書面を予め交付することも義務付けられています。
これらの対応が適切に行われているかについても、記録として残しておくべきでしょう。
(3)顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的
金融商品取引法においては、「顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的」に照らして不適当と認められる勧誘をしてはならないという「適合性の原則」が定められています。
このため、当該顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的を把握していることが前提となります。
金融商品取引業者としては、これらの記録を担当者任せにするのではなく、フォーマット(顧客カード)を統一したうえで一元管理することが望ましいと思います。
また、こうした記録作成というのは面倒だという意識が働くため、ついつい後回し、さらには失念してしまう危険性があります。
そのようなことが起きないためにも、記録(顧客カード)を作成しないと次のプロセスに進めないといったような形で業務フローに組み込み、記録作成を徹底させる仕組みを作ることも大切だと思います。
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ブログ更新: 韓非子とコンプライアンス
記事はこちらです。
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韓非子とコンプライアンス
「性善説」と「性悪説」という2つの考え方があります。
性善説の代表が孔子であり、この影響で日本の社会は性善説をベースに成り立っている(成り立っていた)と言われています。
性善説の立場は、人間の本性は善であり、基本的には人間を信頼していこうという考え方といえます。
そのような考え方は甘い、理想主義だと批判するのが性悪説で、韓非子がその代表的な思想家です。
性悪説では、人間の本性は悪であり、しっかりとし規範をつくってこれを押さえ込まなければならないという立場をとります。
韓非子は、君主には「法」と「術」の2つが必要だといいます。
「法」とはその名のとおりで、法律・明文化されたルールのことであり、これに違反した者は厳しく処罰するということです。
「術」というのは、部下・人民の統制ノウハウのことであり、具体的には勤務評定などで業績・成果を評価することです。
性善説と性悪説のどちらが正しいとは一概にはいえないと思います。
物事の考え方・感じ方のベクトルが揃っているメンバーで構成されているグループ内においては、性善説に基づいてマネジメントするほうが上手くいくかもしれません。
しかし、グローバル化の進展によって異なる文化で生まれ育った者どうしが交わることが多くなった今、自分が当然に正しいと思うことが、相手が同じように考えるとは限りません。
国家どうし・企業どうしにおいても、また国家と市民(外国人を含む)の間においも、相互に誤解が生じないよう明確な取り決めやルールを定め、万一これに反した場合の処置・処罰についても予め定めておくことが重要になってきています。
企業におけるコンプライアンス態勢の構築というのも、この文脈で行われるものだと思います。
ただ、韓非子が「法」と「術」の2つが必要だと指摘しているのに対して、昨今のコンプライアンス対応というのは「法」の面ばかりが強調されているきらいがあるように見受けられます。
また、勤務評定に関しても、「今期の売上」に直接結びついた貢献ばかり評価し、企業の継続的発展に寄与するような行動を取った人に対する評価が適切になされていないようにも思われます。
ルール違反は厳しく咎められるのに、貢献に対して報いることが少ない(無い)組織だとしたら、果たしてそこで働いている人々のモチベーションやロイヤルティ(loyalty)が高まるでしょうか?
コンプライアンスは企業の継続的な発展のために取り組むものですので、単にルールを作って厳しく運用するだけではなく、そこで働く人々の働きがいが高まるような組織を作っていくことも重要な要素だと考えます。
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当事務所の営業時間について
平素は格別のご厚情を賜り誠にありがとうございます。
不動産法務サポートオフィスの営業時間は、平日の午前9時から午後6時までとさせていただいております。
(メールでのご連絡は時間外でも可能でございます。)
宜しくお願い申し上げます。
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ブログ更新: 特定目的会社への手付金支払いについて
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特定目的会社に手付を支払って大丈夫ですか?
「売主が”●●●特定目的会社”というところなのですが、手付金を支払っても大丈夫ですかね?」
以前お客様からご質問を頂きましたので、これについての私の考えを書いてみようと思います。
まず「特定目的会社」とは何かというと、簡単に(乱暴に)言えば「不動産ファンド用のペーパーカンパニー」です。といっても怪しげなものではなく、「資産の流動化に関する法律」という法律に基づいて設立される法人です。
特定目的会社は、ある資産(たとえば不動産とか不動産信託受益権)を取得し、運用(賃貸する等)し、そして処分(つまり売却)すること(これを資産流動化業務といいます。)だけを目的とする会社です。「特定の目的のために設立される会社」=「特定目的会社」というわけです。
※ちなみにファンド業界では、特定目的会社のことを「TMK」と呼んでいます。これに対し、資産流動化法に基づかない証券化で用いられるペーパーカンパニーについては「SPC」と呼んで区別しています。
ペーパーカンパニーよりも実体のある会社のほうが信用できる、と思われるのは常識的かもしれません。しかし、大企業であっても債務超過の疑いのある会社は決して珍しくありませんし、急激に信用状況が悪化することもしばしば起きています。また、本業は順調であっても、新規事業や財務活動の失敗によって屋台骨が揺らぐこともあるわけです。
その点、特定目的会社への手付金の支払いは、以下の理由により必ずしも危険ではないと考えられます。
・特定目的会社は、資産流動化業務以外の業務を行うことが法律で禁止されています。したがって、全く関係の無い事業の失敗等によって財務状況が悪くなる危険性はありません。
・特定目的会社における資金調達は、優先出資、特定社債、特定目的借入等の方法に限られていて、これらについてはすべて資産流動化計画に記載のうえ、財務局に届け出ることが義務付けられています。
・特定社債や特定目的借入を行う場合、債権者(レンダー)との契約によって、レンダーの同意なく債務負担行為をすることが制限されているのが一般的であり、レンダー以外の債権者が存在することは殆どありません。そのため、レンダー以外の債権者の申立によって特定目的会社が破産する可能性は極めて低いと考えられます。
・特定目的会社が資産を処分する場合には、レンダーの事前同意を必要とされているケースが多く、レンダーは買主と売主との間の売買契約の存在を認識していることが通例で、仮に引渡し前にデフォルト(売主の利払いが滞ること)が発生した場合であっても、担保権を行使するよりも買主への売却をそのまま進めるほうが経済合理性があると判断する可能性が高いと考えられます。
もちろん、特定目的会社だから安全だということではありません。特に昨今は賃料収入で利払いができない案件も少なからず存在するわけで、レンダーの姿勢によっては今後特定目的会社の破産が起きないとは限りません。ただそれは特定目的会社特有のリスクではなく、一般の事業法人に対するリスクと同じレベルの話だと思います。
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→ 「信託受益権売買について(5) 書面交付・説明義務と特定投資家制度」
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